ライター(大学ジャーナリスト)石渡嶺司のブログ


by reiji0
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ゴマブックス債権者説明会の詳報

 ゴマブックスの債権者説明会に出席してきました。山田真哉さんのブログでも出ています。

 ゴマ債権者説明会所感  ゴマブックス債権者会

 私の方は、時系列でまとめてみました。ご興味ある方はどうぞ。例によって、結構長いです。と言うか、相当長いです。

【9月7日19時】
PHP研究所の草稿執筆(予定締め切りギリギリ)の最中、ネットでニュースを知る。
同日夜、山田真哉さんのブログでも同様の記事を確認。『18歳のハローワーク』のインタビューに出ていて、森永卓郎・小林紀晴と来て、その次のインタビューが石渡だった。そういう意味では被害者仲間。

まあ、ぶっちゃけて言うと、『18歳のハローワーク』という企画が通っている時点で「よっぽど大変なんだろうなぁ…」とは思っていました。

インタビュー依頼を受けた時点で「これ7月ですか?この手の本は3~5月でしょう」と担当編集者には伝えていた。売れ時を完全に逃している。刊行ノルマを果たすために出したのでは、と当時から思っていた。

被害額は×万円。少額と言えども、10月入金予定で入らないのは痛い。ライター歴7年目にして、初めての焦げ付き。
 
某週刊誌の元編集長にライターになって2年目か3年目に言われた訓話を思いだす。曰く、「君は今、順調に仕事が入っている。しかし、そのうちに原稿料踏み倒しなどの憂き目にあうかもしれない。それは覚悟した方がいい」
 自分の場合はまだ少額だったが、大きい額の人はどうするのだろう…。

【9月8日】
ゴマブックスより「再生手続き申立経緯等に関する説明会御案内」の知らせ届く。
日付は「9月7日」。申立人(再生債務者)はゴマブックス株式会社代表者・代表取締役、嬉野勝美。他、申立人代理人弁護士が3名。

【9月9日】
ゴマブックスの担当編集者より、お詫びの電話。「このたびは申し訳なく…」。一社員を責めてもしょうがないし、何より、社員もある意味、被害者。他の仕事をしていたこともあり
「ニュースは見ました。まあ出版全般が厳しい時期だし、あなたに対してどうこうという思いはありません。こういうお電話をいただいたお気持ちで十分です。出版業界も拾いようで狭いですから、またどこかでお仕事するかもしれませんし、そのときはよろしくお願いします」
と伝える。10分ほど話をした。

【9月10日】
 午前中・ディスカヴァー21の営業部長と大学生協連へ行き新刊案内。直販出版社で取引ない事業連合もあるとのことだったが、『就活のバカヤロー』の続編的位置付けで、著者も事実上は同じ、かつ個別具体論を相当盛り込んだ本です、という話は感触悪からず。どの出版社であれ、就活・大学関連の本は必ず刊行前に行こう、とゴマのニュースを見て決意。黙っていては売れない時代。

【13時25分】
 自宅を電動自転車で出発。代沢~松見坂~道玄坂のコース。
【13時45分】
会場である新大宗ビルフォーラムエイトに到着。貸し会議室で有名らしい。
 エレベーター前、相当ごった返す。7階に着くとさらに人多し。念のためにトイレに行ってから受付。ここでは意外と坦々と手続き進む。名前・会社名を伝え、確認後に名刺一枚を渡す。式次第と合計残高試算表を渡される。
 会場は相当広い。3人掛け机が横に4脚、縦に30脚以上。推定で500~600人超の会場。石渡は22~25列目あたりの左側。すでに半数以上が入場済み。自分の位置からだと、正面遠い。もっと早く出ておけば良かった。
【13時55分】
弁護士団と社長はじめ経営陣、入場。意外に落ち着いている。さらに後方の席埋まる。参加者は年配者あり、若者あり。出版関連のベテランと思しき人、デザイナーかと思しきファンキーな格好の人、自分と同じく理屈っぽそうでライターと思しき人(後の何人かがそうだったと判明)、非常に幅広い。出版社一つ潰れても、これだけ多くの人が苦しい思いをしながら出席する。出版の未来を一人ひとり考えないといけないと強く思う。
【14時】
弁護士「定刻となりましたが、受付お済みでない方もおりますので少々お待ちください」
【14時3分】
債権者説明会、開始。
【14時6分】
嬉野社長の挨拶。振り絞るような声。
「景気の悪化や返本の増大により、売上が大幅に低下した。深くお詫びしたい」
→説明者集会案内の手紙にも「アメリカ合衆国における金融危機に端を発する日本国内の景気悪化に伴い、出版業界全体がベストセラーが生まれにくく」とあった。
 それでは、不肖・石渡の『就活のバカヤロー』はどうか。11月とリーマンショックの2ヵ月後に刊行し、その後10万5000部まで伸びている。文春新書の『強欲資本主義』、池田書店の『おつまみ横丁』など著者名の無名さに関係なく売れた本はいくらでもあった。この部分、後々に再登場してくる。

弁護士が説明引き継ぐ。
「着席のままで失礼します」
「ベストセラーが出ず、返本率が上がった。そのために新刊増やしたが、回復できず」
→自転車操業でどうにかなるわけがない。
「1月に赤字決算。コストを削減しながら事業継続を目指した」
→要するに外注であるライター・カメラマン・デザイナーなどの報酬を減らしたという意味に聞こえた。ライターの自分にとっては。
「今月1日、取次会社の債権者が売掛金を仮差し押さえをした。その分がゴマブックスに入らず先週末に継続困難と判断、民事再生法を申請した」
「民事再生法によって、仮差し押さえは効力を失う」
「破産と異なるので、当面の事業は継続する」
「ゴマブックスは業界内で信用があり、企画力も高い」
「資金力がないため、独力での事業継続は困難」
その後、資金と負債の説明。
「もし破産などで会社にとどめを刺した場合、債権の配当率は相当下がる見込み」

【14時18分】
今後について説明。
「優良なコンテンツを有している」
「そのため、スポンサー企業を選定している。ただし、まだお伝えできる段階にない」
「弁済は少額債権でも法で禁止されている」

【14時25分】
質疑応答、開始。
※「→」のあとのコメント、断わりない場合は弁護士のコメント。「」のない文は石渡の雑感。場の雰囲気など。

「38億円の赤字会社にスポンサーは本当にいるのか?」
「民事再生法の場合、配当率は?」
→「全くの未定、事業継続の場合は新刊を出していく。新刊の企画力はあるし、スポンサーもつくと考えている」
「差し押さえの額は?」
→「数千万円。法的に取り下げてもらうためには同額必要。しかも、他からも、仮差し押さえ申請が出ると、公平性の問題もあった」

【14時38分】
このあたりで挙手増える。
「信用あるというが、なぜ取次が差し押さえをしたのか?同じ経営でいいか?」
→「言い方はちょっとミスリードだったかもしれない」
「経営はこのままか?版権引き下げは?」
→嬉野社長「経営陣の責任感じている」
「会社は出版点数を増やすことで乗り切ろうとしたのか?」
→「答えられない」
→ここ重要。というか、そう考えていたはず。それが無理あったから民事再生法申請になったわけで。
「会社は仮差押さえ意外というが、どうしてか?」
→(9月1日の仮差し押さえ)より前に交渉はしていた。一部では計画倒産か、と言われたかそうではない。
「当社は2年支払ってもらっていない。去年まで黒字とのことだが、2年も支払わない、そういう経営で今後、再建できるのか?お答えしなくてもいいが、本日はたくさんの方が来ている。経営陣が責任をもってやれるかどうか、抽象的な話ばかりでなく、誠意をもってやってほしい」
→会場から拍手。
「契約書を結んでいない。なのにサイトで勝手に使われている場合、どうなるか?」
→「個別案件になるので答えられない。こちら(弁護士事務所)に連絡を」
「未払いがあるのでここに来ている。ゴマの元社員に支払われていると噂あるがそれはどうか?」
→「はじめて聞いたし、手続き開始後は支払いは特にない」
→「少額債権は支払える場合もある。ただし、上限額などはお約束でない」
「社の体質に問題あるのでは。そこを社長に聞きたい」
→「申し訳ないとしかいえない」
「企画力あるというが、企画力ある人が退社していると感じている。企画力の根拠は?」
→嬉野社長「去年90人いたが、適正人数にするためリストラをした。今後の企画についてはこの場では控えたい」
「はじめてのことなので、支払いの説明良く分からない」
「僕も2月に仕事を受けた。支払いできない段階での仕事発注は詐欺になるのではないか?」
→「事業継続の意志があれば、それは詐欺にはならない」
「債権者説明会のオフィシャルな形で連絡こなかった。そういう人が周囲には相当いる。窓口はどこになるのか」
→「申し立てを決断してから時間なかったので送れなかったところもある。窓口は私の事務所に。電話はこういう状況なので話し中多いかもしれない」
「スポンサー付けば配当率はいい率になるのか?破産し、社長の資産差し押さえの方がいいのではないか?」
→「民事再生法は低いが、破産はもっと低い。会社の破産と社長の資産は無関係」
「800万円の支払い、6月から止まっている。9月3日か4日に赤井常務と話をしたら『絶対に倒産はない』と言っていた。つまりウソをついたわけか?」
→嬉野社長「9月4日深夜に決断。赤いはこのことを知らない。隠ぺいの意図はない」
「ショコタンブログなど魅力的なコンテンツを売却するのか?」
「具体的な期日が分からない」
「これまで担当者に連絡しても、捕まらず、返事ももらえない。会社として窓口を作る気はあるのか?」
→それは検討したい。
「少額債権は一人が何件かの仕事をした場合、ばらして考えることはできるか?」
→「一人、一法人で一口のみ」
「作る側としては信用がた落ち。とっとと精算して欲しい」
→会場拍手。嬉野社長「信用を失うことはしていないつもり。ご指摘いただいたことは反映していきたい」
「債権者はどのくらいか?」
→「法人だと626社」
「在庫が売れた場合、どうなるか?」
→「そこまで検討できていない」
「決まっていないことが多すぎる。次の説明会は?」
→「裁判所の手続きで採決を取る。その前に説明会の機会を設けたい」
「今後、こういう本を作っていきたい、という話がなかったのは残念」

【15時59分】
終了。
経営陣3人、起立し、出席者を見送る。社長に文句を言う出席者・写真撮影する出席者など。デザイナーらしき若い男性、怒りのあまり、ドアを蹴飛ばして退場。

【16時15分】
 仕事先の編集者と電話ののち、ビルを後にする。エレベーターホールやビルの外で出席者同士話し込む姿、いくつか。そのうちの一つに山田真哉さんらしき方おり、声をかけるとご本人だった。ちょっと話をしてから辞去。

【雑感】
弁護士、「申し立てをしてから時間がなかった」「個別案件は対応できない」を連発。
弁護士の「企画力あり、業界内で信用ある」が相当反感を買った。
弁護士、話を聞く限り、出版業界に詳しくない。もうちょっと、他の弁護士いなかったか。そもそも顧問弁護士は?
「支払いその他、元々連絡が取れない」という出席者多数。自分の場合、少額かつインタビューされる側ということもあってか、それほど感じなかった。ただし、他の人は相当ひどかった様子。
「企画力のある編集者退社、企画力の根拠は?」はスマッシュヒット。正直、きつい印象。
草思社は応援する著者もいた。ゴマブックスはどうなのか?

 これ、ゴマブックスだけでなく、他の出版社にも言えることなのですが、「編集者の刊行ノルマを埋めるためだけ」、という話がちょっと多すぎます。
 いや、どの編集者にも刊行ノルマがあるのは確かです。そこは否定しません。でも。本を出す以上は著者もですが、編集者もアイデアを考え尽くし、既存の本にない切り口で、いかにいい本にするかを考えるべきです。
まして、出版社もそうだし、著者もですが、「いかにいい本にするか」、これと同じくらい「いかに売っていくか」、これを真剣に考えるべきです。
「目先の仕事が忙しい」「売れないのは××のせいで自分のせいではない」「予算がない」「販売方法は本が売れてから考える」云々。
繰り返しますが、私はこの出版業界で、こういう話を散々聞かされました。それぞれ一理あるかもしれません。一理はあるでしょうが、私は「十理」はない話だと強く考えます。一理ある話をしている間に、どれだけ多くの書店が廃業していったのか。
私にできることは限られていても、自分の利益のためにも、出版業界全体の利益のためにも、日本全体の公益のためにも、私はできるだけのことはしていきたい。
ゴマブックスの債権者説明会を終えて、私は改めてそう感じました。

というわけで、10月の新刊。書店回りは相当力を入れるので、関係者の皆さん、よろしくお願いします。
by REIJI0 | 2009-09-10 22:44 | 日記