ライター(大学ジャーナリスト)石渡嶺司のブログ


by reiji0
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それでも商業出版デビューしたい方のための8つのルール

 なんか、ここ最近、
「商業出版したいのだけど」
 とのご相談をよくいただくようになりました。それを俺に聞いてどうする、とか(いい企画だったらパクッてやれ、げへへへへ)とか思わないでもないです。

 相談したい気持ちは分かるので、なるべく時間は作ります。が、だんだん同じ話を繰り返すのも疲れてきたので、こちらにまとめてみました。ま、ご参考までに。

 なお、前提として、星海社ミリオンセラー新人賞座談会を読むことを強く推奨します。座談会参加者は、山田真哉さん、柿内芳文さん(星海社新書編集長)、星海社新書編集者2人の4人です。特に柿内さんは私の『最高学府はバカだらけ』『就活のバカヤロー』の編集者なのであとあと、色々と登場します。
 ついでに言いますと、星海社新書は『武器としての決断思考』(瀧本哲史)が当たり作ですが、他に『仕事をしたつもり』(海老原嗣生)、『独裁者としての教養』(安田峰俊)、『世界史を作った三〇〇人』(小前亮)の3冊は新書刊行を志望されるのであれば、読破を強く推奨します。

座談会(第0回・前半・後半、第1回)

①類書を読んで、差別化
 就活ものであれば、私の当たり作『就活のバカヤロー』があり、外れ作として『強い就活!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ヤバイ就活』(PHP研究所)などがあります。他に『就活って何だ』(森健、文春新書)など新書だけでも就活ものは多数。どいつもこいつも俺が耕した畑に入るんじゃねえ、という愚痴は置いておいて。類書がこれだけあるのですから、それをちゃんと読んで差別化をどうするか、考えるべきです。
 もし、書きたいテーマがマニアックなものであれば、似たようなマニアックテーマで類書を探しましょう。類書はすでに商業出版デビューの壁を越えているのですから、それを読んで、なぜ壁越えができたのか研究しておきましょう。

②ネットを調べる
 思いつきは誰でもできます。しかも、案外、同じことを思いついてサイトやブログであれこれ展開している人もいます。類書を調べるのと同様、ネットをちゃんと調べておくこと。おそらく、どんなマニアックなテーマでもネットの大海には出ているはず。
 で、大事なのはここ。座談会を見ていると「ネットで得られる知識は薄い」「個人のブログに書くなら丁度いい」などのコメントが頻出しています。
 ウイキペディアなどネットに出ていることをまとめた程度のものは論外。そんなのに700~800円のお金を出す読者なんかいません。
 「ブログなら~」も結構重要。自分で面白いと思ったとしても、お金を出してまで読みたいのか、ブログでタダなら読む程度なのか。ここの差別化をきちんと考えないと正直、商業出版はできません。

③企画書を書く
 長く書く必要はありません。A41~2枚で十分です。予定タイトル、キャッチコピー(内容を一言でまとめると何?)、概要(2~3行)、目次、類書、想定読者、著者プロフィールなどと言ったところ。詳しくは座談会・第0回に書いてありましたのでそちらをどうぞ。星海社新書に応募するしないにかかわらず参考になります。
 長々と書きたい人もいるでしょうが、読む側がかったるいだけです。短めにしましょう。

④著者略歴にストーリーを
 座談会・第0回後半にある通りです。

例1)『最高学府はバカだらけ』プロフィール
~私立北嶺中学・高等学校、代々木ゼミナールを経て東洋大学社会学部に社会学科に入学。卒業後、派遣社員、無職、編集プロダクション勤務ののち、二〇〇三年にライターとして独立(以下省略)

 当時、担当編集だった柿内さんに「面白く書け」と言われたのでその通りに書いたところ、
「プロフィールに代々木ゼミナールって、どんだけ学歴コンプなのか」
「無職って、ふつう、プロフィールに書く話じゃないだろ」
 など、相当釣れました(爆笑)。おかげでいまだに学歴コンプと思われていい迷惑だ、柿内(あ、呼び捨てだ)。
 それはともかく、石渡って誰?という時点でもプロフィールに「代々木ゼミナール」「無職」とあれば、「どんなバカが書いているのかちょっと読んでみようか」と、とっかかりになるわけです。
 読者にとって、無名の著者が「なぜその本を書いたのか?」の判断材料になるのが著者プロフィール。実績がないならないで、なぜその本を書いたのか、読者に納得させ得るプロフィールを工夫してみてください。

例2)『大学の思い出は就活です(苦笑) 大学生活50のお約束』プロフィール
 ~就活未経験の経歴はアンチ石渡から「就活をやったことがない分際で偉そうに」と言われる羽目に(ネタ提供感謝)。大学見学校数は約350。一部出入り禁止の大学がある(らしい)。(以下省略)

 …。なお、あんまりやりすぎると、私のようにあらぬ方面を刺激して相当嫌われることになります。その辺も合わせてご検討を。私の場合は、嫌われ上等、喧嘩は絶賛高価買取中、てなもので確信犯ですけどね。

⑤取材をする
 取材して人の話を聞くのは当たり前。当たり前なんですが、これやらない人が意外と多いです。自分の体験談だけでどうにかなる、と思ってしまうのでしょうか。
 確かに面白い体験をする人はそれなりにいます。面白い体験は面白い話になり得るのですが、ノンフィクションだと、それだけで押されてもなあ、となってしまいます。それこそ②で出した「ブログで十分でしょ」になってしまうわけで。
 取材方法などは省略。というか、取材申し込み時の言い分などは自分で考えてください。

⑥見本原稿を書く
 全く無名の著者が企画書だけで商業出版しようとしてもそれは無理です。商業出版だとおおよそ200万円から300万円くらい、出版社が支出することになります。A4サイズ1~2枚の企画書に300万円出せと言ってもそれは無理な話。見本原稿として、全部書き上げるところまでいかなくても、最低1章は書いておいた方がいいでしょう。
 書き方などは既出の本などを参考にしてください。

⑦第三者に読んでもらう
 座談会・第一回に

全作に言えますけど、まわりの人、たとえばお母さんに自分が書こうとしてることを言ってみて、「なにそれ?」って言われたらダメですよね。それくらいの客観性をもたせて欲しいです。

 とありますが、そういうことです。
 マニアックなテーマであっても、仲間内だけで盛り上がって、マニア以外は読まなくていい、くらいに敷居を高くするなら、それは「ブログで十分」。
 私も週刊誌で修業しているとき、このことを叩きこまれました。
「大学でも中学受験でもテーマは何であれ、そのテーマと無関係な読者も読もうと思えるくらい、分かりやすく書け」
 書籍も全く同様。例えば、応募作品の中で
『大人のための真・スパンキング入門 〜愛を込めて尻を打つ〜』
 なんてのがありました。

スパンキング:性行為中や前戯の一環としてお尻を叩くこと、或は叩かれることに性的興奮を覚えること(ウイキペディアより引用)

 …。えー、正直申し上げて、ワタクシ、この世界、全く理解できません。ここで
「理解できねえなら読まなくて結構だ!」
 なのか、
「いや、叩いてみると楽しいよ~」
 なのかで、通る確率は天と地ほどの差が出てきます。さすがに『スパンキング入門』はお母さんに見せるわけにはいかないでしょうが(見せられたらお母さん、ドン引きですよ)、第三者に見せて客観性を担保した方がいいでしょう。

⑧売り込みをかける
 星海社の場合は新人賞への応募、他の新書編集部なら電話をかけて売り込みます。編集者は朝が遅いので、午後~夕方がねらい目です。
 おそらく、電話をかけた時点ですぐ会おう、という話にはならず、メールで企画書・見本原稿を送ってください、となるはずです(たまに会ってもいい、という編集部もあります)。
 声を掛ける編集部は基本、どこでもいいと思います。たまに、素人の応募お断り、という編集部もありますが、それも聞いてみないと分かりません。

 そういや、4年ほど前、すでに何冊も出している段階で、とあるG冬舎に企画書をメールで送ったところ、
「一切受け付けていません」
 と自動返信メールが返ってきたことも。俺プロなのにその対応、感じ悪いよ、幻T舎さん。ま、そういうのも、やってみないと分からないことなので。
 売り込み先はその新書のラインナップに合っているかどうかも考えた方がいいでしょう。ただ、ここが難しいところで、類書があるからダメか、というとそうでもありません。

 たとえば、光文社新書だと、私の『最高学府はバカだらけ』『就活のバカヤロー』『アホ大学のバカ学生』と大学もの、就活ものがあります。では私だけか、というとそんなことはなくて『近頃の若者はなぜダメなのか』『名ばかり大学生』『高学歴ワーキングプア』『学歴社会の法則』『東大合格高校盛衰史』などの名作が多数。つまり、類書が多数あっても差別化をきちんと図れているなら、大学もの、就活ものでも参入は可能です(そうですよね、光文社新書さん?)。

 一方、大学もの、就活ものが全くないレーベルは、単に書き手不在だったかもしれません。あるいは読者層と合わないなどの判断であえて出していない可能性もあります。
 こういうのは外からは分からないことですが、これまでのラインナップを見ておけば、ある程度は判断できます。
 なお、間違っても同時期に複数の編集部に声を掛ける、などのマナー違反はやめましょう。メールで送って、1~2週間くらいして返事がないようなら次に声を掛ける、くらいでちょうどいいと思います。

⑨酷評された後に
 売り込みをかけて編集者が会ってくれた(あるいはメールでの返信)、あるいは星海社の場合は、公開での選考座談会で講評されます。
 読んでいただければ分かりますが、相当きつい話がガンガン出てきます。
 星海社だけでなく、どの編集部に持ち込んでも、最初は、あれが足りない、これが足りない、と結構きついことを言われるはずです。あるいはうちでは無理、厳しいと言われることもあるでしょう。
 問題はここから。例えば、座談会では柿内さんがこう発言しています。

柿内:僕はもう就活関連の本を2冊(『面接ではウソをつけ』『就活のバカヤロー』)つくったから、もう就活はお腹いっぱいという感じ。相当な新しい面がないと興味を持てないかもしれない……。

 これに対して、就活もので応募、酷評された方(お名前はさすがに匿名にしておきます)が次のようなツイートをしていました。

『就活のバカヤロー』編集者が、「僕はもう就活本2冊つくったからお腹いっぱい」とのこと、大いに失望。就活生に好影響を与えることより部数が大事って、拝金主義もいいとこ。社会的な意義とか影響も考えろよ、このクズ編集者が。
※内容は一部変更

 ツイッターではなくフェイスブックでもブログでも、編集者への批判はアウト。
 編集者を神様扱いしろ、というわけではありませんよ。ボロボロに言われたことをネットでぶちまけるのは大人げない、ということです。
 拝金主義?あの、今、商業出版ってボロボロなんです。売り上げが落ちまくっていて。だからこそ、売れる企画があればアマプロ問わず受け付けているわけで。で、売れる企画というのは柿内さんが言う「初版10万部、3刷りで15万部」なのか、数字はともかくとしても、売れる、と編集者に確信させるものでないと。
 それに、星海社の場合、座談会・第0回(前半・後半)で、どういう作品が欲しいのか、はっきりさせています。
 それをちゃんと読んでいないで応募するから、酷評されるわけです。なのにネガティブなことを書くのは完全なる逆恨み。
 こういうのを平気で書いてしまうと、まず応募した編集部と信頼関係が作れません。そういうのを見ている他の編集者も敬遠するでしょうね。私は編集者でなく書き手ながら、なぜか、商業出版したい、という相談がよく来ます。だからこそ、これをだらだら書いているわけですが、少なくとも、こういう書き込みをしてしまう方に会いたいとは思いません。おそらく、企画書・見本原稿ともつまらないだろうし、それを指摘したら逆ギレコメントをネットに書くことは目に見えているし…。

 仮に、企画が通ったとしても、編集との攻防ってありますし、本が出れば出たで、アマゾンレビューやらブログコメントやら何やら色々です。ちょっとネガティブなことを言われた程度でいちいちネットに書きこんでいると正直、きりがありません。自分が疲れるだけだし、自分が損するだけなのでそういうのはやめた方がよろしいか、と。
 酷評されても、その中に必ずヒントはあります。星海社の座談会では柿内さんが「(就活ものは)相当新しい面があれば」とコメントしているのですから、それなら就活ものを持っていくなら新しい面は何かを考えるべきでしょう。

 落ちる企画は、私に持ち込まれたものと星海社の大賞応募作品を見る限り、8割がたは①~⑦のいずれか(あるいは複数ないし全部)にまずい点があるからです。
 残り2割は相性。運とも言います。ある編集者にはぐっと来るものがなく、別の編集者にはあった、とか。似たような企画が別の書き手で進んでいてボツになった、とか。単純に興味が持てなかった、とか。
 こういうケースもなくはありません。なので、落ちた場合は、自分なりにまずい点がどこだったか、振り返って、再アタックするべきでしょう。
 私もネットに出していないだけで、ボツを食らうことなどしょっちゅう。お互いビジネスなんだし、それをああだこうだと言っていたらきりがありません。

 さて、ここまで書いたことを実践していただければ、本の売り上げとレビュー・コメントに一喜一憂する書き手の誕生です。
by reiji0 | 2012-03-04 16:04 | 日記