ライター(大学ジャーナリスト)石渡嶺司のブログ


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『アホバカ』『苦笑』タイトル秘話

 「ひどいタイトル・いい内容」として定着した『アホ大学のバカ学生』(光文社新書)。今のところ、タイトルだけのご感想は
「こんなひどいタイトルは許せない」
「真面目にやっている大学と学生をバカにし過ぎ」
「壮大なる釣り」
「ちょっといただけない」
「極端なる大衆迎合」
 など様々。
 一番多いのは
「こういうタイトル付ける編集者ってろくでもないですね」
 これを言われたとき、
「いやあ、ほんと、こちらも被害者ですよ」
 などと被害者面して逃げ込むのもいいですが、そうもいきません。何しろ、このタイトル、強硬に主張したのは私であって、編集者はストップをかけた側なのですから。
 経緯をご説明しますと、まず2007年9月に『最高学府はバカだらけ』を刊行。土壇場までタイトルは『アホ大学のバカ学生』でした。しかし、初稿段階でストップがかかります。当時の編集者の判断によって『最高学府はバカだらけ』に差し替えました。
 『最高学府はバカだらけ』『就活のバカヤロー』(2008年刊行)の担当編集・柿内さんは2010年に星海社へ移籍。続編を考えていた私は秋に『アホ大学のバカ学生』企画を提案、すぐ通過します。
 私がこのタイトルを提案したのは『最高学府はバカだらけ』の予定タイトルで思い入れがあったこと、これ以上ないインパクト、そして他に適当な候補が思いつかない、この3点が理由です。
 実は企画が進む中で、編集者からは
「他のタイトルも検討しませんか?」
 と提案されました。色々と考えたのですが、やはり適当な候補を思いつかず。『アホバカ』で行きましょう、と伝えます。
 刊行後の打ち上げで担当編集者に聞くと
「抗議の電話が殺到することを覚悟した」
とのこと。うう、すみません。が、ネットでのタイトル批判は相当数あるにせよ、抗議などは一件もなかったそうです。

 相当もめたのはちくま新書『大学の思い出は就活です(苦笑)』。テーマが大学生活本なので私が推した候補は『大学生活のお約束』。
 しかし、編集者は
「会議では『就活』をどこかに入れようという話になるので入れたい」
 これは、そうですね、とは言えません。なにせ、大学生活ものでも、内容は
「1年生のうちから就活対策をせよ」
 ではなく、
「フツーの学生生活・勉強が結果論としては就活でも強い。だから大学生活と勉強を見直そう」
 なのに「就活」というキーワードをもってくると就活マニュアル本と勘違いされる可能性もあります。
「場合によっては、マニュアル本のようなタイトルになることもありうる」
との話も出たので
「それなら、企画取り下げですね」
と通告。そういうケンカ腰が仕事を少なくしているとなぜ気づかないんだ、自分。
 で、すったもんだの末に候補が4案。

やっぱり「普通」が就活で勝つ!
「フツウの学生」が就活に強い50の理由
思い出が「就活です」と言わないために
人生と学費をムダにしない大学生活50のお約束

 この4案を秋の講演先や知っている学生にアンケートを取りました。

1位:「フツウの学生」が就活に強い50の理由…48票
2位:やっぱり「ふつう」が就活で勝つ!…23票
3位:人生と学費をムダにしない大学生活50のお約束…19票
4位:思い出が「就活です」と言わないために…11票

 「思い出」は最低得票。ま、アンケートに入れた時点で、これは一番不人気だろうなあ、と考えていたので、ここは予想通り。サブタイトルの有力候補でもありました。
 ただ、この4案、書店関係者からはそれなりに不評。
「何でもかんでも就活に結び付けるのは、もうぼちぼちいいんじゃないか」
 そうそう、私も同じなんですけどねえ…。
 で、この意見を元に、『大学生活のお約束』を再主張するも、ここは編集者に押し切られます。そして、迎えたタイトル決定日。
「『大学生活の思い出は就活です!』に決まりました」
とのメール。
 「と言わないために」はどこに?とすぐ電話で確認すると、
「長いので取りました」
 いやいやいや、それは違うでしょう!「就活です!」だと、大学生活の早いうちから就活対策をやっている学生を肯定する内容と誤解されてしまいます。本文ではそんなこと、一言も書いていないわけで、読者に対して二重、三重の裏切りになってしまいます。
それ以前にそういうタイトルは絶対にイヤです、著者の意向無視もはなはだしい!
 というわけで強硬に反対。タイトルの最終決定権は編集部にあるとは言え、ここは譲れません。念のため、直前に講演を控えていた関西大生協さんなどに聞くと
「就活一辺倒の大学生活を思い浮かべ、誰も買わないかもしれません」
 いやいやいや、売れないと、商業出版の意味がない!これは他の大学生協さんも同様でした。
 売れないタイトルだし、そもそもこんなタイトルは嫌です。せめて「(苦笑)」を付けるか、当初の候補通り「~と言わないために」とするか、どちらか。と2案を提示。「(苦笑)」は第9章「面接で話せるエピソード(苦笑)」と章タイトルで使っていました。これも、当初、編集者が付けた章タイトル「面接で話せるエピソード」に私が「(苦笑)」を付けることを強硬に主張。押し切った経緯があります。第9章は資格、旅行、読書など。特に面接で話すエピソードのためとして学生が海外旅行に行きたがります。別名、アリバイ旅行。そんなのは企業からすれば苦笑、失笑もの。それを「エピソード」なんて肯定的な章タイトルは冗談じゃない、「(苦笑)」を付けますよ、と押し切りました。
 この「(苦笑)」を付けるなら本タイトルもまだいいが、付けないならどうしましょうね、と提案(別の言い方をすれば脅迫)。それもあって、「(苦笑)」に落ち着きました。もちろん、新書史上初です、「(苦笑)」が付くのは。なお、9章は「(失笑)」に変わりました。

 こういう、すったもんだの末に、新書2冊のタイトルは決まっていきました。今のところ、『アホ大学のバカ学生』は4万部と好調。『大学の思い出は就活です(苦笑)』は刊行したばかりなのでこれから。さて、どうなる?
by reiji0 | 2012-03-12 00:31 | 日記