ライター(大学ジャーナリスト)石渡嶺司のブログ


by reiji0
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商業出版できない人のコミュニケーション方法

 1~4月の連続刊行(3冊はやっぱ、無理あったと思う)が一段落して、やれやれと気が抜けた先日、こんなメールが届きました。名前を仮にZ氏としておきましょうか。

●Z氏からのメール
はじめまして
前の土曜にH社、T氏と電話で話し、前の月曜日の午後4時にK氏から折り返し電話をしますとの事でしたがかかってこない。
待っていたのに。不義理。
力の入ったメールと△pファイルも送ったのに、pdfにしとこうかとも考えたが無防備なテキストで送ったのに
テーマは△△、△△△、△△△関連など
いそぎ
よろしければ詳しくはお電話で
ps
大卒じゃないのに一足飛びに教授や講師になれればそれをもって大卒資格をあげてもいいのに(以下中略)じゃあ、最短19歳で大卒資格、院卒になれるのか?企業はそう見てくれるのか?司法試験などは?
※原文ママ、固有名詞は伏字。無署名

 最初、このメールを見たとき、知り合いの約束を私がすっぽかしたか、と思いました。何しろ、署名も何もなく。しかし、よーく見ると、今までに受信したことのないメールアドレス。
 企画売り込みをしたい人なんだな、とようやく気づきました。しかし、それならなぜ、無署名で送るのか。まして「詳しくはお電話で」とある割に電話番号など連絡先なども一切なし。うわ、面倒くさ~。スルーしようか、とも思いましたが、自分の新人時代の企画売り込みを考えると気持ちは分からないでもありません(それだって、名乗ることくらいはしたけどさ)。
 というわけで返信したのがこちら。


●石渡の返信
Z様
 はじめまして。ライターの石渡と申します。
 △社の件をなぜ私にメールで送られるのかは不明ですが、一応お返事します。
 結論から申し上げますと、私はあなたのお力にはなれません。細かい事情は当方には分かりませんし、また、それはあなたが解決すべき問題です。
 おそらく、△社へ商業出版の売り込みをかけられたもの、と推察します。その場合、このままであるなら、商業出版は断念されることをお勧めします。
 理由は3点あります。
 第一に、自分で解決すべき問題を第三者にいきなりメールを送り、かつ、どこの誰か、名乗りもしていないこと。
 初めてメールを送る相手にはどこの誰か、名乗るのが当然の礼儀でしょう。
最低限の礼儀が出来ていないのであれば、商業出版の編集者は△社に限らず、誰であっても敬遠するでしょう。まず、その点を反省してください。
 第二に、自分の苦労のみを強調していること。
 「力の入ったメールと△pファイルも送ったのに、pdfにしとこうかとも考えたが無防備なテキストで送ったのに」
とありますが、それはあなたの都合でしょう。自費出版と違い、商業出版は著者だけでなく編集者や営業、書店など多くの人の共同作業です。別に△社(あるいは他の出版社)の編集者に服従しろ、というわけではありません。相性の問題もあるし、企画の質の問題もあります。様々な要素が絡み合って商業出版の是非が決まるわけです。
 付言しますと、17冊刊行した私でも、ボツになることはよくあります。放置されるということもそれなりにあります。昨年の例で言うと、一度、企画会議が通った話を、編集方針の対立によって、私の方からボツにしたことがありました(相当まずい話です)。
 ここで、編集方針が対立した編集者の悪口を言うわけではありません。この方は編集者として相当実績のある方でしたし、仕事熱心な方でした。一度決まった話をこちらからボツにするのは、自分にとって相当マイナスです。が、それでもボツにしました。相手の編集方針を呑むと、こちらの過去の本まで否定することになりかねないからです。
 要するに、いくら力を入れていても、ボツになる、仕事がうまくいかない、というのはよくある話なのです。
 第三に、連絡がなかった程度でイライラするようなら、商業出版デビュー後、体と心が持たないことです。
 私や、著書の多い書き手のアマゾンレビューを読んでください。読者からの様々な批評が書かれています。批評だけでなく、一方的な中傷・批判としか思えないものも多々あります。アマゾンレビューだけでなく、ツイッターやフェイスブック、ブクログ、ブログなどでも同様です。いくら、頑張って書こうと面白くなかった人には面白くなかった、と言われるだけです。ネットだけではありません。面と向かって言われることだってあります。
 ネガティブな反応に対して、過剰に反応される書き手の方もいますが、私はいかがなものかな、と。批評・批判への再批判は泥沼化するだけですし、一番の問題は書き手本人が消耗してしまうことです。
 それよりは、ネガティブな反応に対してある程度、スルーした方が気楽です。
 企画案へのボツに対しても同じ。ダメだったら次の版元を当ればいいだけです。
 それを、ちょっと連絡がなかったくらいで、不義理だ、なんだと憤るようでは、仮に商業出版デビューできたとしても、心が持たないでしょう。
 上記3点の理由から、私はあなたが商業出版には向いていない、と判断せざるを得ません。
 もし、商業出版デビューをしたい、ということであれば、何がまずかったのか、企画内容だけでなく、一連の行動を猛省した上で、どうすればいいか考えてみてください。
 石渡嶺司 拝


 これで少しは我が身を振り返るのかと思ったら、Z氏からの返信。


●Z氏からのメール・2通目
 △社の件をなぜ私にメールで送られるのかは不明ですが
あなたの記事も参考にしたからですし容易に想像がつくと考えます
> 初めてメールを送る相手にはどこの誰か、名乗るのが当然の礼儀でしょう。
最低限以上は書きました。私もあなたの実像を何も知りません
著名人のエゴでしょう
>最低限の礼儀が出来ていないのであれば、商業出版の編集者は△社に限らず、誰であっても敬遠するでしょう。まず、その点を反省してください。
かってから付き合いのある強いほうについたにすぎない論理です
> それを、ちょっと連絡がなかったくらいで、不義理だ、なんだと憤るようでは、仮に商業出版デビューできたとしても、心が持たないでしょう。
取り乱してはいません
一寸の虫にも五分の魂
傷つけられたら牙をむけ自分を無くさぬために
あなたにも△賞応募資格があるわけですがどうしますか?
psについてはどうでしょうか?
※相変わらず無署名

…。やべえ、こいつ、日本語通用していないよ、ママン。名乗るのが礼儀じゃないの、と書いたら「著名人のエゴ」と返信してきやがったよ。「一寸の虫にも五分の魂」とか使いどころ間違えているよ、ママン。
 これ以上のコミュニケーションは無理、と判断して送ったのがこちら。


●石渡の返信・2通目
Z様
 石渡です。メール拝受しました。ご質問の件については回答する必要なし、と当方は判断しましたので差し控えます。
また、企画案についてもこれ以上のコメントは差し控えます。以後、メールをいただいても返信しないことをここに通告します。
 商業出版に向けてZ様のご努力が実るようお祈り申し上げます。
 石渡嶺司 拝


 就活で言うところのお祈りメールですね。実は全然祈ってもいない、という。
 すると、Z氏からのメールがまた来ました。


●Z氏からのメール・3通目
(いい企画だったらパクッてやれ、げへへへへ)とか思わないでもないです。
冗談とは思いますが嘘から出た真、こういうこと一切なきよう願う。
追加の問いかけはしませんが既に送付済みの件についてだけは何らかのお返事をいただきたいもの。
ご著書にもあるような健全なる批判精神を他の強者に対しても見せてもらいたい
※相変わらず無署名


 だーかーら!!名乗れって言ってんだよ、エゴでも何でもいいけどさあ。
「いい企画だったら~」は、私のブログ記事「それでも商業出版デビューしたい方のための8つのルール」の冒頭部分ですね。
 全く、こんなくだらないジョークを真に受けている時点でがっかり味ですよ。そりゃ、『アホ大学のバカ学生』が「大衆迎合」「大学と学生をバカにし過ぎ」と叩かれたり、NHKがエープリールフールでちょい冗談をつぶやいただけでクレームをつけたりする世の中だけどさあ。
 仮に企画を盗むとしても、私のところにはテーマがわずか1行のみ。これでどうやって盗むというのでしょうね?透視能力があるとでも?あるならあるで、こんな署名一つできないアマチュア未満の企画よりは、もっと著名な人の企画を盗みますけどねえ…。あ、こういう冗談もアウトなんだっけ(うわ、うざー)。
 読者からのメールをこのような形でさらしものにすることはこれまでにありませんでした。が、今回のケースはあまりにもひどい、ということで、ここに全文を掲載します。ついでにZ氏はこのブログを見ているようなのでお伝えしておきますが、以降、返信などは一切しません。お一人で頑張ってください。


 商業出版デビューをしたい人は、ついつい盲目的になりがちです。実は私もライターの前の編集プロダクション勤務の前、確か2001年ごろ、一度、商業出版企画を考え、数社に送付。しかも、そのうちの1社には何度も電話をしました(ああ、恥ずかしい)。
 デビュー前の身ゆえ、企画が通ったかどうかやはり不安なわけです。しかし、編集者からすれば、よほどすぐれた内容でなければ、商業出版する意義がなく、また、連絡する義理もありません。通常業務も忙しいわけだし。デビュー前の私はそのことに気づいていませんでした。あのときの編集者さん、ごめんなさい。

 もし、これから商業出版デビューをしたいのであれば、私にメールを送ってきたZ氏を反面教師とすることを強くお勧めします。
 企画案(あるいは見本草稿)を送って、出版社に連絡するとしたら2週間くらい空けること。そこで脈がないようなら、他社に持って行った方がいいです。
 まあ、そもそも、自分勝手な理屈ばかりではどうしようもないのは商業出版だけではないですけどね。
by reiji0 | 2012-04-15 10:34 | 日記