ライター(大学ジャーナリスト)石渡嶺司のブログ


by reiji0
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国際教養大の成功記事とマーケティング



昨日(4月22日)のヤフーニュースでトップに来ていた「国際教養大の躍進」。これにコメントしていたせいか、やたらとフォロワーの増えた石渡です。

 2004年開学なのに、開学6年目とか、就職支援はさほど重視していない(しなくても結果的にどうにかなる)のに「きめ細かい就職指導」になっているとか、ツッコミどころの多い記事ですが、私はコメントを出しただけなのでそこはスルーで(笑)。

 色々、誤解のある記事ですが、人気が高くて、結果論として就職実績が高いのも事実。これでまた国際教養大「株」が上がるのでしょうねえ(と遠い目)。

 人気が上がるのは結構。しかし、こういう結果だけ見て国際教養大の後追い学部(国際教養系学部)を新設する大学関係者が増えるであろうことに強い危惧を覚えます。

 おそらく、国際教養系学部を新設しようとする大学関係者の発想としては

●国際教養大が成功している
●教養教育が見直されている
●早稲田、明治、法政、関西学院などで国際系・教養系学部の新設が相次ぎそれなりに成功している

 という結果だけ見て判断するのでしょう。
ところが、追手門学院大(文学部→国際教養学部)、富山国際大(人文社会学部→国際教養学部→現代社会学部)はじめ国際教養大の後追いをやって(時期が重なっただけかもしれないけど)、こけた例もかなりあります。

 ここで
「国際教養大だけでなく、早稲田大や明治大など成功例はいくらでもあるじゃないか」
 との反論もあるでしょうけど、これに対しては次の仮説をクリアする必要があります。

●国際教養大は公立大。元々、一定の学力がある学生が集まっている。それをさらに伸ばしているのではないか?早稲田、明治、関西学院など成功している私立大の国際教養系学部も偏差値の高い難関大、準難関大ばかりではないのか?

 国際教養系学部を作ったところで受験生が増え(百歩譲って現状維持)一般入試がきちんと成り立っている(志願倍率で3倍超)大学を「成功」、それ以外を「失敗」と分類してみます。

●成功
国際教養、獨協、国際基督教、上智、法政、早稲田、中京
●失敗
東京女学館、富山国際、追手門学院、桃山学院、宮崎国際

 成功例のうち、一番偏差値(代々木ゼミナール)の低いのが獨協大の58、その次は中京大の59。他は全部60台。
 失敗例は東京女学館48、富山国際44、追手門学院43、桃山学院47、宮崎国際45でいずれも50台の大学が不在。
 偏差値だけではありません。代ゼミ入試データを見るとデータ未出の宮崎国際以外は全部、受験生を前年度から減らしています。
 つまり、中堅以下の大学については国際教養系学部はそれほど支持されていないことが明らかです。
 身も蓋もない言い方をすると

「国際教養系学部は偏差値が高い(受験生集めが期待できる)公立大、難関~準難関私大では成功、中堅以下の私大では失敗」

 という結果の方がより説得力があると思うのですけどねえ…。
 しかも富山国際大は国際教養学部を現代社会学部に変えているし、少し前には倉敷芸術科学大も国際教養学部をスクラップしています。

 もちろん、大学経営幹部が
「偏差値の高い低いに関係なく教養教育を展開したい」
 という思いを持つのはそれはそれで評価します。しかし、そうなると
「国際教養大が成功したからうちも」
 という発想に基づくのはそもそも間違いで、国際教養大とは違う特色を出していかないと、学部改組をしなければよかった、ということになりかねません。国際教養系学部ではないけど、国際系学部では共愛学園前橋国際大が成功モデルとしてもいいかなと思うのですが、それはまたいずれ。

 私はマーケティングについては専門家でなく、単なる素人です。その素人から見ても国際教養系学部最高っすよという話は上記のデータから考えると非常に危険だな~と思うわけです。
 こういう話、国際教養系学部作ると受験生がんがん来ますよ、という大学コンサルタントからすれば営業妨害もいいところかな、まあ、いくら嫌われても知ったことではないですけどね。
by reiji0 | 2012-04-23 22:17 | 日記